幌延_評価書_10章1.5(生態系)【公開版】_リンク削除
16/120

生態 生息環境 注:参考文献「チュウヒ保護の進め方」(2016年6月 環境省自然環境局野生生物課) チュウヒの獲物の捕獲方法は、採食地の上空を、滑翔とはばたきを交互に行い、風上に向かって低く飛び、獲物を追い出すようにして探し、獲物を見つけるとダイビングして足で捕らえる不意打ちハンティングという方法である(森岡ら 1995 Clarke 1995、Simmons 2000)。小鳥が草むらから飛び立った瞬間に、背後から空中で捕らえることもある(森岡ほか 1995)。なお、このような不意打ちハンティングにより追い出した獲物をつかまえやすいのは、ヨシ原の中でも、細い水路や池沼を含むヨシ原であったり、湛水域にあるヨシ等が生育する浮島であったりするため、ヨシ原の中でもこれらの環境を採食地として選好することが、渡良瀬遊水地における越冬期の調査で明らかにされている(平野 2005, 2008)。このように、チュウヒの餌内容と採餌環境は、時期によって異なる。 <行動圏> 北海道ウトナイ湖周辺の湿地で行われた調査では、ARGOS 衛星送信機を利用した衛星追跡を行い、繁殖期における行動圏と越冬期における行動圏が推定されている。行動圏の推定には固定カーネル法(Fixed Kernel)と最外郭法(Maximum Convex Polygon、以下「MCP」という。)が用いられており、利用分布の95%を含む行動圏が推定された。繁殖期における行動圏は、MCP 法を用いると5,884ha、固定カーネル法を用いると1,041ha であった。越冬期における行動圏は、MCP 法を用いると36,806ha、固定カーネル法を用いると4,050ha と広い範囲を利用している。追跡された個体は、複数のねぐらを持ち、1日に20km 以上移動していることが明らかとなっている(中山・浦 2010) <営巣環境> 環境省が行った営巣環境の調査(環境省2015)では、巣はヨシ群落(ヨシの他はスゲ類等が生育)にあり、群落を構成する植物の種数は比較的少なく、植生構造も単純であった。上層植生の植被率が全ての巣で100%と高いのに対し、下層植生の植被率は5から0%とほとんど見られなかった。ヨシの高さは2m 前後と高く、ヨシ群落の外から巣そのものを目視することはできなかった。調査した全ての巣が、窪んだ地形の上に架巣され、巣の下には湛水域があった。また、巣は湿潤域から乾燥域へ至る遷移帯にあり、水分傾度の変化に伴って植物相の構成が異なっていた。巣の周囲には河川、湖沼等の水域があった。 営巣環境の条件として、巣の直下が湛水し、周囲が水域などで遮られることにより、外敵である哺乳類の侵入しづらい環境であること、ほぼヨシだけが旺盛に生育する植生であることが重要であると推察された。 10.1.5-16 (1236)

元のページ  ../index.html#16

このブックを見る