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表 10.1.3-106 重要な種の影響予測結果(タンチョウ) 本種の主な生息環境は草地環境(とうもろこしが作付された耕作地、耕作地・二次草地及び自然草地(湿性))であり、事業の実施により本種の生息環境の一部が改変される可能性が考えられる。本種の主な生息環境となる草地環境のうち、とうもろこしの作付け状況を広域で確認したところ、飼料用のデントコーンの作付けが複数箇所で確認された(図 10.1.3-251参照)。しかしながら、とうもろこしが作付された耕作地のうち、最も近い場所で対象事業実施区域から6.6km程度離れており、これらの耕作地は改変されない。さらに、耕作地・二次草地の改変割合は3.2%、自然草地(湿性)の改変割合は0.2%と小さく、改変は風力発電機の設置箇所や一部の輸送路に限定される。 以上のことから、改変による生息環境の減少・消失に係る影響は小さいものと予測する。さらに地形や既存道路等を十分考慮し、改変面積を最小限に留める等の環境保全措置の実施により、影響は低減できるものと予測する。 本種の主要な移動経路は草地環境(とうもろこしが作付けされた耕作地、自然草地(湿性))の上空及び水域の上空であることから、採食行動に係る移動経路の一部が阻害される可能性が考えられる。しかしながら、とうもろこしの作付け場所の位置は、対象事業実施区域から離れており、パンケ沼・ペンケ沼周辺で繁殖するつがいの移動経路も遮断される可能性は低いこと、改変区域は風力発電機の設置近傍及び既設道路周辺に限定されることから、本種が迂回するための空間は確保される。 以上のことから、移動経路の遮断・阻害に係る影響は小さいものと予測する。 本種の主な生息環境のうち草地環境(耕作地・二次草地、自然草地(湿性))は改変区域に含まれることから、工事の実施に伴う騒音により、改変区域周辺に生息している個体の逃避等の影響が考えられる。しかしながら、工事に伴う騒音は一時的なものである。 以上のことから、影響は小さいものと予測する。さらに、環境保全措置として、工事中は可能な限り低騒音型の建設機械を使用することにより、影響は低減できるものと予測する。 本種は渡りの途中に調査地域を通過し、特に現地調査において調査地域周辺で確認された春の渡り時期においては、ブレード・タワー等への接近・接触の可能性が考えられる。しかしながら、既設風力発電施設の28箇所(15メッシュ)及び新設風力発電設置箇所の5箇所(5メッシュ)において、現地調査では高度Mの飛翔は確認されなかった(対象事業実施区域内で確認された飛翔は、高度300~400m上空であり、高度Hの飛翔であった)。また、改変は風力発電機の設置箇所や一部の搬入路に限定され、新設風力発電機は既設風力発電機より間隔が保たれており、本種が迂回可能な空間が確保されている。 以上のことから、本種が風力発電機のブレードへ衝突する可能性は低いと予測する。 東アジアに分布する。大陸の主にアムール川の本・支流沿いで繁殖し冬は中国江蘇省海部と朝鮮半島に渡る個体群と、北海道東部に留鳥性の個体群がいる。北海道では主に十勝と根釧原野の湿地で繁殖し、冬は大半が釧路地方に集まる。近年は宗谷地域で繁殖するものもある。 繁殖期には低層湿地、中間湿地、沼沢、河川、干潟などにすみ、通常ヨシ群落の中に営巣するが、未利用の放牧地や背の低いササ草原に営巣した例もある。繁殖後期から秋期には牧草地や畑で餌を採ることが多い。冬は不凍の河川でねぐらをとり、給餌場のほか湧水地、河川、放牧地で採餌する。 国指定の特別天然物。 【参考文献】 「レッドデータブック2014-日本の絶滅のおそれのある野生動物-2 鳥類」(2014年、環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室) 本種は現地調査において、猛禽類調査時、任意調査時に確認された。 本種は対象事業実施区域内で1回、調査地域外で4回確認された。いずれも春の渡り期に相当する4月及び5月の確認であった。 改変による生息環境の減少・消失 移動経路の遮断・阻害 騒音による生息環境の悪化 ブレード・タワー等への接近・接触 分布・生態学的特徴 確認状況 影響予測 10.1.3-506 (1002)

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