分布 生態 日本では、北海道、本州、四国、九州の他、千島列島南部、佐渡島、伊豆諸島、小笠原群島、硫黄列島、見島、トカラ列島、奄美大島、琉球諸島、大東諸島で生息記録がある(日本鳥学会 2012)。繁殖は、北海道、青森県、秋田県、新潟県、茨城県、栃木県、千葉県、石川県、富山県、愛知県、三重県、滋賀県、大阪府、岡山県、山口県、福岡県で確認されている(森岡ほか 1995, 環境省 2014)。 冬期は、日本全国の草地、ヨシ原、ヨシ原に隣接する刈り田跡などで見られるが、北海道、東北地方では少なく、越冬のための集団ねぐらが、栃木県、茨城県、千葉県、愛知県、三重県、岡山県、山口県で確認されている(森岡ほか 1995, 環境省 2014)。 <生活サイクルの概要> チュウヒは、早春になると越冬地(日本国内、中国南部から東南アジア)から日本国内の繁殖地に飛来する(越冬地から遠く移動せずに繁殖を行う個体もある。)。2月下旬にはつがいを形成し、その後造巣をはじめる(中川 1991, 日本野鳥の会三重県支部 2006, 多田ほか 2010,市川ほか 2011,多田 2014a)。4月下旬には抱卵を開始し(西出 1979, 樋口ほか 1999, 多田ほか 2010)、抱卵5週間ほどでヒナが孵化する(中川 1991)。ヒナは孵化後60~75 日齢で親から独り立ちする(西出 1979,多田ほか 2010, 多田 2014a)。基本的に一夫一妻制であるが、各地で一夫二妻の事例が確認されている(日本野鳥の会岡山県支部 2002, 中川 2006, 千葉ほか2008, 小栗ほか 2009, 多田ほか 2010)。 繁殖終了後、親鳥と一部の幼鳥は繁殖地から姿を消し(中川 1991)、成鳥は越冬地に渡り、幼鳥は分散する。 越冬地では、ヨシ原等において、多くの場合、越冬のための集団のねぐらを形成する。 繁殖しているつがいの1年の生活サイクルは次の図のようになる。 <食性と採食環境> チュウヒの採食地は、ヨシ原、農耕地(用排水路沿いの草地を含む)、牧草地等である(森岡ほか1995, 高橋2014, 多田2014b)。 チュウヒは、捕獲できるあらゆる小動物を食物としている(中川 1991)。なかでもネズミ類が多く、河北潟干拓地では獲物の90%近くがハタネズミであり、次いで鳥類が多く、カルガモ、キジ、ヒクイナ、ヒバリなどの雛を捕食している(中川 1991)他、大型の鳥類(主にカモ類で体重が200g 以上のもの)も捕食する(平野ほか 2005)。夏にはアブラコウモリもよく捕る。その他カエル類、魚類、コオロギなどの昆虫類をしばしば捕食する(中川 1991)。冬期に積雪などで獲物が捕れない時には、魚の死体を食べることもある(中川 1991)。 表 10.1.5-11 チュウヒの分布と生態 b. 上位性の注目種(チュウヒ)に係わる調査の結果 (a) 調査の結果 ア. 文献その他の資料調査 文献その他の資料により整理したチュウヒの生態を表 10.1.5-11に示す。 10.1.5-15 (1235)
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