表 10.1.3-99(1) 重要な種の影響予測結果(ヒシクイ【亜種ヒシクイ】) ロシアのツンドラ地帯で繁殖する亜種ヒシクイのうち、カムチャツカ半島南部の群れが日本へ渡る。夏期にロシア極東のハタンガ川からアナディール川流域、チュコト半島のツンドラ地帯、及びカムチャツカ半島西岸の低湿地帯で繁殖し、冬期に中国、朝鮮半島、日本などへ渡り越冬する。国内では、北海道東部、東北北部の青森(小川原湖周辺)、秋田(八郎潟干拓地、小友沼)を主な中継地とし、主に宮城県北部で越冬する。亜種関係にあるオオヒシクイは主に日本海側の沿岸湿地生息するのに対し、亜種ヒシクイはその多くが太平洋岸の宮城県の内陸湿地に生息分布し、1986年までは伊豆沼や鳴瀬川河口をねぐらとしていた。その後、化女沼へねぐらを移し、現在は平筒沼や相野沼なども利用する。最近日本海側でも小群ではあるが観察事例が増えつつある。 主に水辺(湖沼、河川)や農耕地(水田、畑、牧草地)に生息し、夜間は湖沼で過ごし、早朝にねぐらから飛び立ち、周辺水田などで採食する。 【参考文献】 「レッドデータブック2014-日本の絶滅のおそれのある野生動物-2 鳥類」(2014年、環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室) 改変による生息環境の減少・消失 移動経路の遮断・阻害 騒音による生息環境の悪化 ブレード・タワー等への接近・接触 本種の主な生息環境は草地環境(耕作地・二次草地、自然草地(湿性))及び水域であり、事業の実施により本種の生息環境の一部が改変される可能性が考えられる。しかしながら、本種の主な生息環境となる草地環境のうち、耕作地・二次草地の改変割合は3.2%、自然草地(湿性)の改変割合は0.2%と小さく、水域も改変されない。また、改変は風力発電機の設置箇所や一部の輸送路に限定される。 以上のことから、改変による生息環境の減少・消失に係る影響は小さいものと予測する。さらに地形や既存道路等を十分考慮し、改変面積を最小限に留める等の環境保全措置の実施により、影響は低減できるものと予測する。 本種の主要な移動経路は草地環境(耕作地・二次草地、自然草地(湿性))の上空及び水域の上空であることから、採食行動に係る移動経路の一部が阻害される可能性が考えられる。しかしながら、改変区域は風力発電機の設置近傍及び既設道路周辺に限定されることから、本種が迂回するための空間は確保される。 以上のことから、移動経路の遮断・阻害に係る影響は小さいものと予測する。 本種の主な生息環境のうち草地環境(耕作地・二次草地、自然草地(湿性))は改変区域に含まれることから、工事の実施に伴う騒音により、改変区域周辺に生息している個体の逃避等の影響が考えられる。しかしながら、工事に伴う騒音は一時的なものである。 以上のことから、影響は小さいものと予測する。さらに、環境保全措置として、工事中は可能な限り低騒音型の建設機械を使用することにより、影響は低減できるものと予測する。 本種の年間予測衝突数は、亜種を含めた種ヒシクイとして算出した。 本種は渡りの途中に調査地域を通過し、春季と秋季の渡り時期においてはブレード・タワー等への接近・接触の可能性が考えられる。しかしながら、既設風力発電施設の28箇所(15メッシュ)における、本種の年間予測衝突数は、環境省モデルが0.0406個体/年、球体モデルが0.0962個体/年である。新設風力発電設置箇所の5箇所(5メッシュ)における、本種の年間予測衝突数は、5メッシュの合計値で、環境省モデルが0.0168個体/年、球体モデルが0.0527個体/年であり、既設風力発電設備より、新設風力発電設備で、年間予測衝突数は減少する。また、改変は風力発電機の設置箇所や一部の搬入路に限定され、新設風力発電機は既設風力発電機より間隔が保たれており、本種が迂回可能な空間が確保されている。 以上のことから、本種が風力発電機のブレードへ衝突する可能性は低いと予測する。 分布・生態学的特徴 確認状況 本種は現地調査において、猛禽類調査時に確認された。 本種は調査地域外で3回確認され、対象事業実施区域内では確認されなかった。 影響予測 10.1.3-515 (1013)
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