表 10.1.3-89 重要な種の影響予測結果(ヒナコウモリ) 本種の主な生息環境である樹林環境(針葉樹林、広葉樹林)、自然草地(乾性)、自然草地(湿性)及び耕作地・二次草地が改変区域に含まれることから、事業の実施により本種の生息環境の一部が改変される。しかし、針葉樹林の改変はなく、落葉広葉樹林の改変割合は0.3%、自然草地(乾性)の改変割合は3.3%、自然草地(湿性)の改変割合は2.1%、耕作地・二次草地の改変割合は18.5%と小さいことから、影響は小さいものと予測する。なお、改変や造成範囲は必要最小限にとどめる等の環境保全措置を実施することから、影響は低減できるものと予測する。 本種の主要な移動経路は開放空間及び樹冠部の上空であることから、繁殖や採餌に係る移動経路の一部が阻害される可能性があると考えられる。改変は風力発電機の設置箇所近傍に限られるものの、バット・バードストライク調査を計95日(内、5月中旬から10月下旬に49日)実施して、ヒナコウモリ2個体の死骸が確認されていることから、新設風力発電機においても移動経路の遮断・阻害の影響があると予測する。 バット・バードストライク調査を計95日(内、5月中旬から10月下旬に49日))実施した結果、ブレード・タワー等への接近・接触による死亡と考えられる本種の死骸を2個体確認した。 本種が発する超音波の周波数帯は10~30kHzである。 高度別自動録音調査において、10~30kHzグループの音声はブレード回転高さ30m地点で8,058例、75m地点で3,215例確認された。確認例数は対象事業実施区域の北側の地点(B1)で最も多く、南側に行くほど少なくなった。時期別の確認状況として、確認例数は7月中旬から9月上旬の2ヶ月間に集中しており、この期間の確認例数(12,486例)は全期間の確認例数(13,697例)の91.2%であった。風速別の確認状況は、カットイン速度以下での確認割合が67.6%となった。 ほぼすべての音声は5月中旬から10月下旬(特に7月中旬から9月上旬)に確認されている。カットイン速度以上での確認割合は32.4%であり、バット・バードストライク調査を計95日(内、5月中旬から10月下旬に49日)実施して、死骸を2個体確認していることから、この期間は、ブレード・タワー等への接近・接触の可能性があり、影響があると予測する。それ以外の11月上旬~5月上旬にはほとんど音声は確認されていないことから、この期間は、ブレード・タワー等への接近・接触の可能性は小さく、影響は小さいものと予測する。 ただし、この種の衝突に関する既存知見はほとんど存在しないため、予測には不確実性が残ることから、事後調査としてバットストライク調査を実施し、ブレード等への接近・接触状況を確認する。 本種は夜行性であり、昆虫類を餌資源とするため、風力発電機の夜間照明により誘引される可能性がある。しかし、本事業ではライトアップを行わず、夜間の照明は航空障害灯に限られることから、夜間照明による誘引の可能性は低いものと予測する。 北海道、本州、四国、九州から採取記録があるが、繁殖地として確認されているところは大変少ない。 大木の多い地域では1年中集団で樹洞を昼間の隠れ家にしているが、家屋や海蝕洞なども繁殖の場所として利用する。冬眠の時にはそこからいなくなるが、冬眠場所についてはほとんど知られていない。日没後まもなく隠れ家から飛び出し、飛翔している昆虫類を捕食し、日の出前に隠れ家に戻る。初夏に1~3仔を雌親ばかりの100頭を越える出産・哺育集団で出産する。 【参考文献】 「コウモリ識別ハンドブック改訂版」(コウモリの会編、2011年) バット・バードストライク調査において、対象事業実施区域内で2個体確認された。 改変による生息環境の減少・消失 移動経路の遮断・阻害 ブレード・タワー等への接近・接触 夜間照明による誘引 分布・生態学的特徴 確認状況 影響予測 10.1.3-505 (1003)
元のページ ../index.html#505